家づくり工房kitote 中山建設  

道具の名前を覚えるということ

道具の名前を覚えるということ

新人家具職人の気づきノート|memo_002

前職ではまったく違う業界にいた私にとって、工房の道具たちはすべてが未知の存在でした。

最初のうちは、会話に出てくる単語すら頭に入ってこないほどで、まさに“言葉がわからない世界”でした。

最初に混乱したのは、「ノギス」「昇降盤」「カンナ」「ノミ」など、道具の名前。

もちろん五味さんはごく自然に、自分の手足のようにそれらを使いこなしながら作業をしていて、

「ノギスで測ってみて」「この材料は昇降盤でいこうか」というような会話が飛び交います。

私は「それってどれですか?」と恐る恐る聞いては、初めはひとつひとつ形と名前を結びつけていく毎日でした。

でも、ただ名前を覚えるだけではなく、「どんな時に、どんなふうに使うのか」をセットで学ぶことで、ようやくその道具が自分の中に“入ってくる”ような感覚がありました。

名前と形がわかっても、すぐに使いこなせるわけではありません。

道具を手に取るとき、五味さんに最初に教わったのは「使い方」よりも「扱い方」だったように思います。

たとえばスケール、スコヤ、トリマー、インパクトドライバーなど。

どれも家具づくりには欠かせない基本の道具ですが、扱いを誤ればすぐに精度に影響が出てしまいます。

落としてしまえば、目盛や刃先、部品がほんのわずかでも曲がり、

その“ほんのわずか”が仕上がりや組み立てに大きなズレとして現れてしまう。

場合によっては、家具として成立しなくなってしまうことすらあります。

「正確に使うためには、まず正しく扱う」

道具の置き方や場所、手の添え方や指の位置、力の当て具合、力を加える方向。

そういった細かな部分に気を配ることの大切さを、実際の作業を通して学びました。

今では道具を持つ手にも、自然と“気を配る感覚”が少しずつですがついてきた気がします。

道具の名前や作業の手順は、最初はただ“聞いたことのある言葉”でした。

でも、実際に作業してみると、「ああ、こういうことか」と気づく場面がたくさんあります。

たとえば「鉋(かんな)をかける」という言葉。

先日、五味さんにレクチャーを受けながら仕込んだ鉋で自ら削ってみて、木の繊維の向きや力加減で仕上がりがまったく変わることを実感しました。

一つひとつの言葉が、手を動かすことで実感のある言葉として自分の中に定着していきます、

その積み重ねが、少しずつですが自分の成長につながっている気がします。

まだまだ知らないことのほうが多く、作業を止めてしまうこともしばしばあります。

けれど、最初の体験で来させていただいたころよりも「会話の中で意味がわかる」「作業の流れが見えてくる」ようになってきました。

日々の作業の中で、道具と向き合いながら覚えていく“言葉と動きのセット”。

その積み重ねこそが、基礎をつくってくれているのだと感じています。

そのことを胸な日々精進していきたいと思います。

工場に置いてある「家具用語事典」

五味さんが会社に体験で来させていただいた頃に持ってきていただいたものです。わからない言葉があれば見ています。言葉の由来や歴史にも触れられるのでとても楽しいです。

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