家づくり工房kitote 中山建設  

kitoteの造作家具マイスター・五味さんインタビュー

「造作家具がつくる、家のただならぬ雰囲気に魅力され」——kitoteの造作家具マイスターが語る職人としての矜持

家の居心地には、図面だけでは測れない“ちょっとした差”があります。

暮らし方に合わせて高さが揃っていたり、壁と家具のラインがきれいにつながっていたり。そんな細やかな部分にこそ、「造作家具」は静かに力を発揮してくれます。

ありがたいことに「家具が素敵ですね」とお声がけいただくことも増えました。それは長年、“質の高い家具を建築にきちんと収めたい”と挑戦してきた積み重ねだと思っています。

中山建設では、家具を後から置くものではなく、住まいを自然に整える大切な要素のひとつとして捉え、自社工房で家具をつくり、設計士・大工・家具職人がひとつの流れで家づくりに関わっています。

では、造作家具があると実際にどんな違いが生まれるのか。どんな視点で家具づくりに向き合っているのか。住まいを支える大事な家具をつくる職人とは、どんな存在なのか。

私たちは、造作家具が空間に“ただならぬ雰囲気”をもたらすものだと考えています。この抽象的で少し言葉にしにくいけれど、住まいづくりでは確かに大切になることについて、日々の現場で向き合う kitoteが誇る造作家具マイスター・五味さん(家具職人歴20年以上) に聞いてみました。

「木工だけ、ずば抜けていた」。家具一筋二十数年のキャリア

— まずは、五味さんの原点からお聞かせください。どうして家具の道に進まれたんですか?

五味:よく「なにかきっかけがあったんですか?」と聞かれるんですが、ドラマチックな理由はなくて…。

中学のとき、木工の授業だけ、成績がずば抜けて良かったんです。

他の教科は“中くらい”なんですけど(笑)、木を触っている時間だけは、周りの音が消えるというか、時間を忘れて没頭していました。

ただ当時は、「家具職人」という仕事があることすら知らなくて、せいぜい「大工さんかな?」くらいのイメージでしたね。

— そこから、どうやって「家具」にたどり着いたんでしょうか?

五味:高校の進路指導室で、たまたま「木工科のある職業訓練校」を見つけたのが転機です。

1年通って、機械の扱い方や道具の使い方、図面の読み方を覚えて、そこで初めて「家具屋さん」という世界を知りました。

訓練校を出てから家具会社に就職して、23年間、ずっと家具だけ。

キッチン、収納、テーブル、本棚、建具…一通りやりましたね。

「0.1ミリが気になる人間」細かすぎると言われても、譲れない基準

— ご自身のことを、あえてひと言で表現すると?

五味:よくも悪くも「重箱の隅を突く人間」だと思います(笑)。

0.1ミリのズレが気になるし、サンドペーパーの番手や質が悪ければ、普通にクレームも入れます。

外部の業者様や協力会社様やからは「そこまでやらなくても、お客さんは気づかないですよ」と言われるんですけど…「いや、細かくないとできない仕事があるでしょ」という感覚なんですよね。

— “気づかれないレベルの良さ”まで追い込みたい?

五味:そうですね。

「あ、これすごいですね!」と気づいてもらいたいわけじゃなくて、

なんとなく見たときに「いいよね」と思ってもらえればいい。

むしろ「特別に見せつける」のとは逆で、スッと空間に溶け込んでいる状態が理想です。

ペーパーがけ vs カンナ天板の“ツルツル”に隠れた、独自の仕上げ理論

— 技術的な話も伺わせてください。五味さんの“らしさ”が一番出るのって、どこですか?

五味:一番分かりやすいのは、天板の仕上げですね。

お客さまが一番触るところでもあるので。

— 中山建設のテーブルやカウンターって、手のひらで撫でると“ツルッ、スッ…”と、独特な気持ちよさがありますよね。

五味:あれは、裏でかなりやってます(笑)。仕上げ方には大きく2つあって、

(1) カンナで仕上げる:仕上がりは「100点」だけど、2〜3時間かかる
(2) サンドペーパーで磨く:1時間で「90点」に近づける

というイメージです。

職人としては、もちろんカンナで全部仕上げたい。

でも現場にはコストや時間の制約があるので、「どうやってペーパーでカンナに近づくか?」という自分なりの理論を組み立ててきました。

— 五味ペーパー理論ですか。

五味:はい(笑)。木って、削り方によって“けば”の立ち方が変わるんです。

普通にペーパーだけでガリガリ擦ると、表面を整えているように見えて、実は 繊維を掘り起こしている。

僕が考えているのは、どうすれば けばを立たせずに切っていけるか。どのタイミングで番手を上げると、木の表情が一番きれいに出るか。

このあたりは、他の現場ではあまり気にされないポイントだと思います。

— だからこそ、中山建設の造作家具は、「ツルツルな」心地よい質感になっているわけですね。

五味:はいそうですね。

“触ったときに自然に気持ちいい”というのがゴールなので、光り過ぎてもダメなんです。

この辺りは言うは易しなのですが、相当の年数をかけて培ってきた技術であり蓄積が必要な部分かと思います。

「家具は建築の嘘を許さない」造作家具=家の精度を映す“鏡”

— 中山建設では、「造作家具は建築の一部」という言い方をよくされますよね。

五味:はい。僕もそう思っています。

家具だけ見ればキレイでも、壁との取り合いが1ミリズレるだけで、空間全体の“品”が落ちるんです。

逆に言うと、家具がきれいに収まっている家は、建物自体の精度も高い。

だから僕は、家具図面だけでは仕事をしません。

電気図面、ガス、給排水、構造図まで全部見ます。

— 家具屋さんが、電気図やガスの図面まで見るのは、かなり珍しいですよね。

五味:普通はやらないと思います。

でも、そこを見ないと 「このコンセント位置だと家具が入らない」「この配管だと扉が開かない」という事故が起きる。

なので設計士さんにも大工さんにも、かなり踏み込んで「ここ、こうした方が良くないですか?」と提案してます。

相手の領域に土足で飛び込む行為であり、人によっては嫌がられるかもしれませんが、中山建設の仲間は、お客様のために最適なお住まいを提供したい集団なので、ありがたがられます。

— 良いチームがあることが前提の動き方ですよね。

五味:そうです。外注の家具屋だったら、そんなこと絶対言えません。

中山建設の場合は、「家具職人・設計士・大工が、同じチームとして動く」ことが前提にあるので、現場でその場で相談して一声、二声で決めてそのまま手が動くというのが当たり前になっています。

それゆえ、家具屋さんから注文しようと思うと数千万円かかるようなダイニングキッチンも当社が造れば安価かつ品質もよく提供できる。

このあたりは当社の強みだと思っています。

特別な自社工房と「週1台ペース、累計500台」の実績

— 中山建設の強みとして、自社の家具工房を持っていることも大きいですよね。

五味:そうですね。工務店としてはかなり珍しいと思います。

たとえばここ数年だけでも、

・造作キッチン(フルオーダー)
・壁面本棚・スタディコーナー
・テレビボード
・玄関収納(下駄箱+コート掛け)
・洗面台とミラー収納
・パントリー収納
・ベッド、間仕切り家具
・ペットの仏壇、フォトフレーム …など

だいたい週に1台ペースでつくっているので、累計でいうと500点くらいにはなると思います。

— 「家具の数」=「暮らしのカスタマイズの数」でもありますよね。

五味:まさにそうです。

お客さまの数だけ、暮らし方がある。

それを形にしていくのが造作家具の魅力かと思います。

「この人がいるなら、ここに頼みたい」専門性が“ありがたがられる”瞬間

— 印象に残っているお客さまとのエピソードはありますか?

五味:家具屋さんにお勤めの方からのご依頼がありました。

金具の種類まで細かく指定されていて、

図面もご自身で描いてこられて、

“玄人同士” でかなり踏み込んだやり取りをしました。

制作には通常の倍、2ヶ月かかりましたが、完成後に「五味さんがいるから、中山建設に決めました」と言っていただけて。

職人冥利に尽きるなと感じましたね。

— プロの目を持つお客さまから、指名で信頼されるというのは、相当なことだと思います。

五味:正直、表に名前を出してほしいタイプではないんですが(笑)、

「この人がいるなら安心だ」と思ってもらえるのは、嬉しいですね。

造作家具は「贅沢品」ではなく、「妥協してはいけない基礎」

—最後に、造作家具の導入を迷っている方へ、メッセージをお願いします。

五味:よく「造作家具って、贅沢ですよね?」と言われますが、僕からすると少し違っていて。

キッチン、収納、本棚、デスク、テレビ台…

これって、毎日必ず触る場所なんですよ。

そこを既製品で“なんとなく”済ませるのか、自分たちの暮らし方に合わせて“きちんと設計する”のかで、

10年後、20年後の満足度はまったく変わります。

だから、中山建設としては、造作家具は「贅沢なオプション」ではなく「住まいを良くするために妥協してはいけないピース」だと考えています。

そして、そのための

・専用工房
・家具専門の職人
・設計士 & 大工 & 家具職人と三位一体で動く体制

を持っている工務店は、正直かなり稀有だと思います。

もし「家具まで含めて、ちゃんと家をつくりたい」と思っていただけるなら、

その部分では、胸を張ってお手伝いできますので、ぜひ一度お越しいただけると嬉しいですね。



(インタビュアー・文章:松尾 知明)

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